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A kite dancing in a Hurricane

風の向くまま気の向くままに色々なことを。

「The Butcher of Ark」第7巻翻訳

チャプター7:全ての死せる魂たち

どのくらいの間、意識を失っていたのかはわからない:しかしカリアンの首にはまだわたしの指の跡が見えていたという事実から判断して、ほんの数分のことだったのだろう。
わたしの脇にひざまずいている彼を見た時に考えた最初の事は、わたしの哀れな人生は終わったということだった。
次はカリアンのことだった - ある種の穏やかならぬ魔法により1分以上も締められていながら笑うだけの呼吸をしていられた - 彼はすでに幾度と無くわたしを殺せたのだ。
しかしそうはしなかった。
その代わりに、彼はひざまずいて、わたしにその右手を差し出してきた。
何も考えずに彼の手を取ると、わたしは引き起こされた。
それから、部屋の変化に気が付いた:二人の女の子から拘束道具ははずされていた。
もう二人とも並んで、厚手のウールの毛布をかぶって横たわっていた。
一人は目を閉じていた。
もう一人の目はまだ大きく開いており、カリアンとわたしが部屋に入ってきた時にしていたのと同じく、死んだような視線で壁を見つめていた。

"ファイアパームのエキスだ"、カリアンは言った。
"一滴たらすだけで大暴れしてるイノシシさえ眠らせる"
少しの間、悲しみのかけら - あるいは怒りだろうか? - が彼の視線に現れた。
"彼等は、商品が抵抗出来るようにしたくないのさ"

"商品だって?"、わたしはしばし言葉も出てこず、質問というよりかはただの発言のような返事をした。
不意にわたしは馬鹿げた感じがした。

"そうさ"

わたしは息が詰まりそうになった。
"カリアン、わたしは..." - わたしは疲れて、右手のしぐさを言葉の代わりとした。
"わからない"、疲れ果ててぼんやりと聞こえた。

"気にする事はない
"

カリアンは笑みを浮かべた。

それからベッドの端に腰をかけて、わたしに全てを説明し始めた。"

~

わたしには永遠のように思われたが、30分後に、カリアンは部屋のベルを鳴らした。
少女たちはまだまんじりともせずに、広いベッドで寝ていた。

カリアンは事前に貴重な短剣をわたしによこしてきた。
それはとても高品質なもので、わたしが以前持っていた鉄のものよりも扱いやすかった。
そしてわたしの不安な視線への返事としてうなずいただけだった、さながら吟遊詩人が最初の演奏を前にした息子を励ますかのように。

今やわたしたちは扉のところに静かに立っていた。
彼の目は輝いていた、火についてわたしに最初に話していたあの晩の時の様に。
しかし今度は、彼の目には何か別のものもあった:期待のようなものが。

足音が近づいてきて、カリアンが少し膝を曲げたのがわかった。
扉がノックされた。
カリアンは、コンティスとの約束通りにもう一度ベルを鳴らした。
扉が少し開かれた。
『誰もこの世に善悪という存在で現れたりはしない、道はお前にそう信じさせていたようだがな、ヤエル。 - 我々の生れ落ちたその日、我々の魂は空っぽ以外の何者でもなく、わたしたちだけがそこに書き込むことを決められるのだ。』
すると、扉の隙間から頭がのぞいた。
大きな目と球根のような鼻を持ったひげ面の男だった。
彼の目は、迫りくるカリアンに見開かれた。
的確かつ無駄のない動きで、カリアンは短剣を男の首にその付け根まで突き刺した。
すぐに男は崩れ落ちた。
床にぐらぐらと崩れ落ちた男の立てた音は、わたしに、父が家の厚い木の床に落とした新鮮で柔らかな毛皮を思い出させた。
男は抗議するかのようなガラガラとした音を発していた。
逆にカリアンは、まるでただ立ちすくんでいるかのように見えた。
彼の左目は右に、右目は左に激しくけいれんしているかのようで、口の端は上下にがたがたしていた。
わたしは最初の殺人、そのイメージ、その恍惚感を思い出した。
罪の味。
そして彼は麻痺から自分自身を解放し、頬から飛び散った血をふき取り、わたしに笑いかけた。
わたしは指ほども動かなかった。
『...彼らのことも書こうか?』

死んだ男の背中の下に広がったどす黒い血は、開花したバラの花弁のようであった。
カリアンはそれを避け、扉を通り抜けた。
少しの間わたしはためらったが、彼に続いた。
『例えるならばそう。我々だけが生きていく上でどの道を進むのかを決められる:罪の道か、善の道か。
善の道を行く事は容易ではない、ヤエル。
弱くなってしまう衝動がいたる所にあるからだ。
それは欲望や怒り、そして弱い意思といった衣を身にまとっている。
我々はそれを"悪霊"と呼ぶ。』
カリアンは反対の部屋の鋼の扉に手をかけ、立ったままそこに居た。
『我々が奴らに降伏するたびに、ほんの少し罪の道を進む。』
彼の唇が動き、わたしには理解できない何かをつぶやいた。
『初めはまだ逃げる事ができる。
しかし罪を犯せば犯すほど、それは強くなっていく。そして結局』
- 鋼の扉は輝き始め、煙を上げた、しかしカリアンは手をどかそうとしなかった -
『奴らは我々を手に入れる。』
熱と、溶けた金属のにおいが通路全体に充満し始めた。
『あの悪霊たちは暴君を生み出す。
奴らは奴隷を生み出す。
奴らは暗殺者を生み出す。
奴らはどこにでも居て、数多くの名前を持っている。』
そして部屋番号XIIIの扉は、倒れることなく薄い紙切れのように真ん中で折れ曲がった。
カリアンは手を離して、扉を蹴りあけて、部屋に入った。
『奴らに完全に屈服した者たちを、我々は"堕落者"と呼ぶ。
彼らはそう呼ぶに値するからだ。』

大きなベッドの端には、貴族が顔をかしげて座っていた。
彼のことがわかった:待合室でわたしたちと同じ時に待っていた男だった。
彼の前には少年がひざまずいていたが、その年齢を考えたくなかった。
わたしが経験する事となった残虐行為の詳細は割愛しよう。
とにかくその状況に圧倒され、何が起きているのか理解する事はできなかった。
ただ言えるのは、恐怖で口を大きく開いた男の視線は、わたしの胃を興奮気味にぞくぞくさせたということだ。
わたしは鼓動が早くなり、流れる血が熱くなり始めたのを感じた。
『彼らはこの世の邪悪に責任を負う者、誘惑に耐え、悪霊に抵抗するにはあまりに弱い者たちだ。
彼らのせいで戦争があり、苦しみや死があるのだ。
我々は、ヤエル、我々は特別なのだ。
我々は運命の元に生まれ、そして』
- 数瞬のためらいもなく、カリアンはベッドに向かっていき、ブーツで少年を脇へ押しやり、短剣を男の首に斜めに突き立てた -
『火が我らの血管を流れているのだ。』
勢い良く血が噴き出し、今度は、死は静かなものではなかった。

男は恐ろしい叫び声を上げて、両手で傷口をおさえた。
数秒の間、カリアンはその状況を見て微笑んでいた。
それから彼は死にかけの男をつかんで、力任せに持ち上げたが、それはわたしがカリアンの体格からは想像もしていなかったほどだった。
『火を。』
男の激しいわめき声が大きくなった。
カリアンの服越しに、彼の上腕部の緊張振りが見えた。
そして彼は首を絞めた。
血がほとばしるように袖を流れ落ち、彼の周りに熱のベールが張っているのを感じた。
『我々は、なぜ我々という存在が選ばれたのか、その力がどこから我々を生み出したのかはわからない、
しかし一つの事だけはわかる:我々はこの世を守るために、この世を浄化するためにここにいるのだ。』
論理的でないが、わたしはその男が死ぬのを見た時に非常な喜びを感じた。
わたしの腹部はぞくぞくし、膝はがくがくとなった。
わたしたちが彼を裁いた、脳内を駆け巡った。
わたしたちがその罪で彼を裁いた!

わたしの指が短剣を握り締めた。
わたしの呼吸が早く、あえぐようになった。
体中の筋肉が動き出したくてたまらなくなった。
男の叫び声や息が小さくなり、一方でカリアンの服は今や完全に血に染まっていた。
一瞬、わたしは気分が悪くなり、口に胆汁がせり上がってくるのを感じた。
これは狂気だ! これは殺人だ!、かつてのわたし自身がこの体の奥ではっきりと明確に叫んだ。
しかし同時に、それは感傷的で弱々しく、間違っていた。
『そう...これは我々の任務だ...悪霊に降伏した者たち全てを殺すのだろう?』
この場所の恩恵を受けた者たちは誰であれ死に値するがゆえに。
彼らは、不幸にもあまりに貧しかったり、あまりにちっぽけである -
あるいは単に間違った時代や間違った場所に生れ落ちた若く、無垢なる魂を犠牲にして事をなしてきた。
売春宿の運営者は若者たちを拉致し、薬漬けにし、そうして裕福で無慈悲、かつ道徳よりも欲求を上とする者たちに差し出してきた。
奴らは罪人だ。
悪霊に取り付かれている。
警報の報せが通路から聞こえてきた、そして間もなく足音がし始めた。
やつらが来る...わたしたちを止めたがっている。
そんな考えが、ほとんど淡々とした平穏さでわたしにやってきた。
感じていた - 知っていた - やつらには勝機などないと。
最初の一人が扉のところに姿を現すと、カリアンは男の首から手を離した。
彼はもう叫んでおらず、静かに床に崩れ落ちた。
『全員ではない...あまりに多すぎる。』
しかし火の命じた死すべき者たちだ。
ゆっくりと、ほぼいつものようにカリアンはわたしの方へ振り向いた。
先ほどほんの少しだけ彼の目に見た人間らしさは、今や完全に消えていた。
『そうだ、これが我々の存在する唯一の理由なのだ、ヤエル。
我々は人類とその完全な腐敗、そして堕落の間に立ちふさがるものなのだ、そしてそれは単に人の弱さによるものなのだ。』
彼の顔には血が染み込んでいた。
赤いしずくが頬から滴り落ちている。
ひげにこびりついたり、一部は赤いマルファスフラワーから滴り落ちる朝露のようにあごから垂れていた。
彼の漆黒の瞳にある輝きは、もはやわたしのもっとも敬けんにして信心深い心の一部でさえも拒む事ができなかった。
今日になっても目の前に思い浮かべる事ができるそのイメージは、狂った神の精神から生じうる男の特徴の一つである満面の笑みをその中心に持っていた。
『そう、これがまさに我々がここに居る理由だ、ヤエル。
この者たちは罪に自らを捧げた。
彼らは堕落した、そしてその死だけが』
- あなたたちはおそらく、心の内の目の前で演じられている劇では、邪悪な魔術師の狂気の表情を見ていることだろう、
だがそれは間違いだ。
もし血も、死体も、がたがた震える少年もなければ、その笑みはまっとうなやり方で金を手に入れようとしていた少年のものとなったことだろう。
その顔には、罪の意識や血に対する飢えもなく、ただ至福だけがあった。
実際...彼は自らの行いをこの世でもっとも当たり前のことであるかのようにわたしを見ていた。
そして彼は正しかった、その時はそう思っていた。
わたしたちのしたこと、目指していた事は正しい事だったのだから。
この世のあらゆるところは腐敗し、それゆえにそのサービスを受ける人たちがいたのだ。
だから我々がここにいるのだ - 『彼らの魂を浄化する』ために。

鋭い叫びがわたしのトランス状態を断絶させた。
剣が鞘から抜かれた音を耳にして、振り向くと、わたしに向かってそれを振り回してくる姿が見えた。
わたしは、自分がまったく緊張したり圧倒されたりしていないことに驚いた。
事実、時が止まっているかのように感じられた。
その男のあらゆる動き、筋肉の細かな動き、呼吸のときの胸の動き、これまで経験した事がないほどはっきりと観察できた。
わたしはほとんど平常的な冷静さで短剣の柄を持つわたしの手の握りに気付いた。
火が大きくなり、その熱はわたしの中で膨れ上がっていった。
そうして、わたしの足がかつて出来ると思えなかった動きを見せた。
太ももに力をこめて膝を軽く曲げた。
同時に、衝動がわたしの体を駆け巡り、捕食者のように跳躍した。
わたしは右肩の筋肉を緊張させ、股関節を右前に回転させ、まっすぐ伸ばした右手をパイレア式バリスタの矢のように前に突き出した。
短剣は男の心臓に深く突き刺さった。
彼を浄化したと、脳裏を横切った。
うずくものが腹部と腰で爆発した。
世界が回転するのを止めた。
魂が上っていく、はるか上に、『体から遠く離れて、暗黒の中へ、光の中へ、わたしは自由だ、彼を見た、彼らを見た、
彼の行いを、彼の罪を、だんだんまぶしくなる、彼らを見た、わたしは - 』

~

彼の精神と一つになった。

わたしが殺しているその男がわたしの前に少年の姿で立っている。
わたしたちは暗い路地にいて、悲鳴が聞こえた。
その少年は別の子供を、何度も何度も蹴っていて、それは子供の顔が無残な形になるまで続いた。
その体はもうぴくりともしない。
その手は一切れのパンを握り締めていた。
『彼の最初の罪だ。』

稲妻が脳裏を走り、自分が別の記憶にいる事がわかった。

今度の彼は若者で、わずかにひげを生やしており、すでに多数の傷があった。
彼は同意するようにうなずいている別の誰かと話していた。
そのしつこくまとわりつく男の右手はナイフを握っていて、それを相手の心臓に深々と突き刺した。
犠牲者が地面に倒れ落ちる前に、彼の左手はすばやくベルトから小袋を掠め取っていた。
彼は逃げて行った。
『悪霊が彼の中にいる』、わたしは非常にはっきりとわかった。
『彼はあいつらの侵入を許した。』

また新たな肉体だった。

そのとりつかれた男は大人になってわたしの前に立っていた。
まっすぐに彼の顔を見るが、相手は私のことを見ていなかった。
その空っぽな目の奥に隠れている悪霊に気付くのになんら苦労はなかった。
奴らは意地悪く笑っていた、奴らは自分たちの勝利を知っていたからだ。
『奴らは彼を手に入れた』、わたしにはわかっていた。『彼はもういない。』
その男は足元の若い売春婦に話しかけていた。
彼はその右手で硬貨をいじくりまわしていた:彼は振り返って、催事場の手品師のように彼女の目の前でそれを投げ上げた。
わたしは彼女を助けたかった、彼女に逃げるように言いたかった、だが出来なかった。
その少女はうなずいて、彼の後についていく。
彼は少女を気絶させ、真っ暗な小道に引きずり込む。
あの建物だとわかった。
光が弾けて、暗闇がやってきた。

わたしは、殺した相手の死体のそばにいる現実の自分自身を目にした。
しばらくの間は完全に静かだった。
何も動きはない。
音も無く、思考も無い。
わたしは痛みにゆがんだあの男の顔を見ると、憂鬱な気持ちが脳裏に忍び込んできた。
彼は罪の奴隷だった。
彼は自分のやっていることをわかっていなかった。


『だが彼には選択肢があった。』
彼は正しき道を選ぶ事もできた、しかし罪を選んだ。
彼は『悪霊』を選んだ。
そして奴らは彼を食らった。
わたしは短剣を、彼の死体に深く突き刺さっているそれを見た。
傷口からは血だまりが広がっていて、それはまだぷっくりと、鮮やかな赤色をした動かない氷のような姿を見せていた。
もはや彼に望みは無いことがわかった。

『わたしは彼を救った。』

すると、大きな雷鳴と共にわたしは自分の肉体へ戻った。
火は、海上の小さな舟を飲み込む嵐のように、わたしを飲み込んだ。
それは恍惚感で、流れる溶岩で血管を満たし、わたしは太陽のごとく燃え盛った。
狂った笑いが喉の奥から噴出して、わたしの口は興奮気味に動いた;狂った人形使いの命令下にあるようでたじろいだ。
『わたしは彼の罪を食らった!』、わたしはわかって、そしてその思いがわたしの興奮を激しく大きなものとした。

そして、その喜びはあふれ出したのと同じくらいすばやく消えていった。

それは強烈な経験であったが、最初の殺害行為の半分ほども興奮する事はなかった。
その理由ははっきりしているように思えた:わたしが赤牛亭で殺したあの野蛮人の罪は激流そのものであったが、この衛兵の罪はささやかな流れでしかなかった。
わたしは瞬きをして、まぶたの赤い滴りを取り除いた。
その男の顔を見やる。
彼の頭は肩の方へ傾き、わたしの左手は、友を慰めるかのように彼の背へ添えられていた。
彼は、抗うような表情を見せ、ごぼごぼとした喉からの音を立てていた。
そして彼の生命の火は消え失せ、疲れたようなため息と共に地面に沈み込んだ。

トランス状態から覚めると、わたしの足はルビーのように赤い血だまりの手前ではなかった。
わたしは奇妙な動きをして、一瞬の閃光は手の中の短剣と死体の間を跳び越したのだ。
かすかに胃のうずきが残されただけだった。
全てが瞬間的な出来事だった - 衛兵の攻撃、わたしの狙い済ました攻撃と恍惚。
カリアンを見ると、まだあの死んだ男の隣に立ったままだった。
彼は満足そうなうなずきを見せ、短剣をベッドシーツでぬぐった。
それから彼は壁の方にしゃがみこんでいる無反応な少年に近付いた。
彼の目は大きく開いているにも関わらず、カリアンがわたしたちの為に"注文した"
あの少女たちの目にあったものと同じ空虚さに気付いた。
わたしの仲間は少年の前に膝をつき、その血まみれの手を肩に置き、彼に何かささやいた。
少年が理解できずに彼を見ると、カリアンはもっとしっかりとした声で同じことを繰り返した。
すると少年はうなずいて、ベッドの下にもぐりこんだ。

"うまくやれているようだな"、カリアンはようやく話してきた。

返事をしたかったが、失敗した。
歓喜の名残はあまりに強すぎた。
今頃、膝と手が震えているのに気付いた。

わたしの『兄弟』はそれが面白いようであった。
彼はやれやれと頭を振って、立ち上がり、通路をのぞき見た。

"他の警備もいっせいにやってくるだろう"、彼は不安のかけらも無く口にした。
もしわたしたちがさもしい心から宿を襲った強盗や殺人犯、あるいは盗賊だったならば、"備えろ"、とか"戦いが近い"ような言葉が次に来ていただろう。
しかし彼は何も言わず、炎が燃えている時のようなベールのごとくわたしたちを取り囲む静けさが、知る必要のある事を教えてくれていた。
事実、わたしは火によって制御され、わたしの中のそれをもって、この場所に住まう全ての死せる魂を、同様に訪問者も管理者たちも救うつもりだった。
コンティス、ヤレナ、待合室のあの女性も。
 - 彼らはみな悪霊に降伏しており、これまでずっとそうしてきたかも、たった一度だけかも、しょっちゅうのことかも問題ではなかった。

カリアンにうなずいた。
彼の目から放たれている言葉は間違いようがなかった。

『汝の義務を果たせ。』

~

わたしは、この後の数分- あるいは数時間? - の間に起こった事の断片だけは覚えている。
どれだけの人を殺したのだろうか?
2ダース?
3か?
もうわからない。
記憶の大半は恍惚感に包まれていた。
灰となった人々の古き伝説のように、わたしの突きで敵は命を落としていった。
わたしは、彼らのむなしい抵抗の努力をたやすく回避して、何が起きていたのか理解する前に、刃は相手の肉体に深々と沈み、その罪を味わっていた。
戦いの間に鏡を目にしたのを覚えている。
わたしの顔は血に染まり、服はキラにおける日の出のごとく赤く、わたしの目はおとぎ話でしか知らなかった躁病に輝いていた。
何人かの衛兵がわたしたちを見て逃げようとしたという事実にも驚かなかった。
しかしそれは無駄だった:堕落者の誰もこの売春宿で生き延びる事はなかった。

わたしが殊更に良く覚えている殺人がある:2階に到着した時、わたしたちは予期していなかったが、バルコニーの扉を破ろうとしている男がいた。
彼はこちらに気が付くと、ひざまずいて命乞いをした。
カリアンは男の襟首をつかんで、彼を隣り合った部屋に引きずり込んだ。
そこには16歳ほどのハーフエターナ人がベッドに横たわっていた。
彼女は全裸で、四肢はベッドの支柱に縛り付けられていた。
鎖はとてもきつく、血まみれで青いタコが手首や足首に出来てしまっていた。
過度の飲酒がありながら、その少女はかつてはとてもきれいだったに違いないことに気が付いた。
彼女の髪は強くカールした褐色の海であり、その顔は精巧にしてはかなげな美しさがあり、エターナの血が持つ者特有のそれであった。
しかし、彼女は痛ましい見た目となっていた。
その背中一面に、耕された畑の畝のように深い傷があり、手足には無数のあざが浮かび上がっていた。
どの傷も新しく、それはまさに今朝、いたぶられたことを示していた。
カリアンはその老いた男の首をつかみ、その耳元で言葉をささやきながら彼女のことを無理やり見せていた。
彼は泣きながら慈悲を求め、家族や道、公正なやり方のことを口にした。
わたしは笑うしかなかった。
死に直面すると、誰もが自らの行いを悔やむ- 3度目の殺人の後になってわたしにははっきりした。
わたしたちは彼らを許したくとも、それはできぬ事だった。
一度罪を犯した者は誰であれ、再び罪を犯す;悪霊とはそういうものなのだ。

カリアンはその男にもそのことを言ったが、彼は頑固で物分りが悪く、自分は悔い改めると確信していた。
最後には、わたしがその悲劇を終わらせた。
わたしが短剣で行った先の殺人と違い、本能的に、男が奴隷を拷問するために使っていた九尾の猫に手を伸ばした。
彼はもがき、びくりとしたが、カリアンはわたしが彼を絞め殺すまでがっちりとつかんだままだった。
彼の罪の味は腐りかけていた。腐敗していた。偽物だった。
彼はひどい男だった、悪い父親だった、今日、かなりの金を積んで行っていた拷問行為はこれまでに類の無いものであった。
彼がようやくわたしの前に崩れ落ちると、美しく刺繍された革の小袋が服から滑り落ちた。
その中身が、血に塗れたわたしのブーツの脇の床に散らばった。
わたしは振り向こうとするところで、きらきらとした金色の小物に気が付いた - 熊の頭が繊細に刻まれているブローチだった。
家紋だ。
当惑して、わたしはカリアンにそれを見せた:わたしたちは貴族を殺したのだ。
その余波はわたしたちにいかほどのものがあるだろうか?
彼の答えは、質問に関係なく彼が良く使うそれであった:笑顔だ。

ヤレーナ、冷たい目をした美人は最善の方法で身を守った一人だった。
他の者たちのように逃げようとする代わりに、彼女は通路でわたしたちを待ち伏せていた。
カリアンとの戦いは相当続いたが、彼女の攻撃をたやすく防いでいた事を考えると、
彼がただそれを楽しんでいただけだと思えた。
彼女の集中力が一瞬だけ揺らいだ時、カリアンはもう相手の腹部に短剣を深々と突き立てていた。
彼女はハッとなり、傷から赤黒い血が流れ出るのを無駄に防ごうとしていた。
何か言葉を発しようと口を開いたが、その機会はなかった:彼はしっかりと狙った一撃で彼女の首を切り落としたのだ。
しばらくの間、彼は至福に満ちているかのように目を細め、部屋の熱はほとんど我慢できないほどに
熱くなっていた。

それから5分もしないうちに、コンティスも最期の悲鳴を発した。
他の者同様、彼は慈悲を請い、改善を誓い、わたしたちに金や女性たちを返す約束をした。

しばらくして、わたしたちはアンダーシティの影から逃げ去った。
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