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A kite dancing in a Hurricane

風の向くまま気の向くままに色々なことを。

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「The Butcher of Ark」第6巻翻訳

チャプター6:シルバークラウド

わたしが理解できなかったカリアンの技能の一つが、ほとんど眠らないでいる事だった。
旅の間、かれは真夜中を過ぎてから寝床に行き、いつもわたしよりも先に、それも夜明けよりも相当早く目を覚ましていた。
彼には厳格な朝の決まりがあった:それはわたしの知らない言語による30分ほどの祈りから始まった。
それから彼は1時間ほど、週のうち2日はもう少し長くシミターの訓練をした。
その後、彼は風呂に入るか、もし近くに川や池がない時は自分の体にいくばくかの水を降りかけた。
最後に、彼は苦味のあるハーブを混ぜたシリアルパルプの朝食を準備して、まるでパイレア人のあらゆる謎がそこに隠されているかのように黙々と食べた。
わたしは、彼は毎晩長くても4時間しか寝ないと思っていて、どうやって彼が、イノーダンの水につかった後のように健康的で元気に見えるのか不思議だった。

旅のさなかでは、彼はわたしを眠らせたが、アークでの1日目は朝も早くにわたしを起こした。
わたしは一晩中の大騒ぎの後だけに全身だるさを感じた。
しばらくの間、わたしは眠気のこもった目で、フォッグヴィルで毎朝洗顔に使っていた水桶を探そうとした。
それから自分の居場所に気が付いた。
ぶつぶつ言いながらもわたしはベッドを抜け出て、外を見た。
正しき道にかけて、いったい何時なんだ?
まだ太陽のかけらもなかった。
カリアンがわたしの気持ちを読み取ったかのように答えた。

"鶏の知らせより2時間前だ、友よ。言いたい事もあるだろうが、" - 彼は腰に剣を固定させようとしていた - "必要な事だ。予定がある。"

わたしは返事をしたかったが、ただ不機嫌そうなうめきだけが口からもれ出た。
カリアンは続けた。

"1時間後に曇り小道の一番奥の家の前で落ち合おう。そこで待っている。"


わたしがなにか答えられる状態になる前に部屋を出て行った。
しばらくは途方に暮れ、ベッドの端に座っていた。
それからため息をついて立ち上がり、窓の方まで行った。
無意識に、眠っている街の屋根の向こうを見渡した。
雲ひとつ無く、月の銀色の光が差し込み、こんな早朝にも関わらず通りには何人かの姿があった。
わたしは自分の殻に引きこもった。
実際のところ、深酒の結果である頭痛にも関わらずかなり気分は良かった。
もうほとんど赤牛亭での出来事の事を考えなくなっていたが、今度はカリアンの言葉を思い出していた:
君は彼らの犯罪、罪悪感を感じているのだ、そして恍惚感は君の勇気に対する報酬なのだ。
それはやつらの罪という果実なのだ。

これが、殺人がわたしに感銘を与えない理由となりうるだろうか?
なぜならそれは...正当化だから?

わたしは思った:気にするな!

わたしは思った:良くなったじゃないか。

楽しげだが、同時に絶望的な音がして、わたしはその考えから振り払われた。
代わりに、眼科に動くものを見た。
アークを貫く大通り沿いに重い袋を運ぶ3人のやせた子供たちを見た。
彼らのすぐ後ろには、3人の武装した姿があり、おそらくは衛兵で、見回りをしていた。
またおそらくは居酒屋の裏口に通じている裏通りには、樽と干草の山の積まれた手押し車を押す、一人は大柄で筋肉質、もう1人はやせている2人の女性がいた。

色々と考えが押し寄せたので、窓から離れて身支度を整えた。
居酒屋で食事を済ませ、自分の用事に出発した、好奇心と不安がない交ぜになったものを感じながら。

わたしは、不必要なアークの中での最初の散策の詳細であなたを退屈させたくは無い、おそらくはその通りの場所を知っているだろう。
だがその時のわたしは知らなかった。
衛兵の目がわたしを疑わしげに見て、半分つぶれている倉庫の方を指差して初めて、わたしは自分の居場所に気付き、約束の時間の15分前に到着した。
曇り小道という、街の建設者たちははっきりした理由も無くそう名づけたそこは、職人地区の行き止まりを示していた。
まともな上層地区の住人ならまず入りたくないであろう、大きな石のゲートにつながる道だった。

それはアンダーシティへの入口を示していた。

わたしは不安そうに見渡した。
カリアンのものも含めて数多くの物語からアンダーシティは知っていた。
秘密の取引者や犯罪者と関わったり、唯一の手頃な家である粗末な小屋の一つに住むほど困窮に瀕しているものでない限りは避けるべき場所だった。
美しい首都とアンダーシティの悲惨さの間の対比をわたしがどう想像していたかに関わらず、わたしの考えは常に反映と貧困の間にはある種の"推移"を含んでいた。
しかしそんな事はないように思われた。
見上げれば、印象的なミラードの塔が目に映り、その名を持つ翼のある動物がいて、裕福な旅行者がそれで街にやってきたり、他の場所へ向かう際に訪れるところだった。
わたしの横には大きな滝が降り注いでいて、数分前に渦巻き模様の市場を後にしてもう一度あの小さな小道を歩き続けたら、職人地区の中心にいるのがわかっただろう。
イラっとして、木の扉をもう一度見やると、そこは2人の重装備の衛兵で守られていた。
こんな扉が本当に他所への、不快な世界への入口なのだろうか?

わたしは肩に誰かの手を感じた。
カリアンだった。

"ここにいたのか。良かった。"、彼は言った。"用意は良いかな"?

わたしは目を細めた。
今や最初のレッスンがアンダーシティと関わりがある事がわかった。
しかし本当にわたしに何を期待しているのだろうか?

"たぶん。で...何をすることに?"

カリアンは笑った。
"とても簡単な事だ、友よ。"
彼は肩からナップザックを下ろし、膝に乗せ、何かを探し始めた。
彼はまたわたしを見てきた。

"楽しもうじゃないか。"

実際にアンダーシティはその巨大で守られた木の扉の向こうにあるのだろうかという疑念は、衛兵がわたしたちの入場を許可して数分で消え去った。
わたしは、彼等はわたしたちの気が触れていると思った事だろう、扉の両翼が開かれた時にそう思っていた。
街の上層区画の住人は誰も自発的にそこへ行きはしない、そこではオーダーも衛兵も無力である事が良く知られていたからだ。
非公式だが、誰もがオーダーとララータ、胡乱な者たちの組織の間の暗黙の了解について知っていた:
お前たちはお前たちでやっていろ、我々は我々でやっていく。

それゆえ、アンダーシティは街の中の街であり、素朴だが居心地のよい木と漆喰の家や噴水、劇場のある地上のアークに比べてずっと薄暗かった。
そこでは、ララータが生活のあらゆる面を支配していた、そしてそこに住むに足るほど不運な者たちは誰であれ望むと望まざるとに関わらず彼らに従う必要があった。
身震いしながら、わたしは旅の行商人がかつて話していた事を思い出した。
彼の話は、ほんの数日前に誰もがあこがれる黄金の鎌のバッチを受け取った若い商人についてのもので、彼を堅実な商人として表していた。
この若者は、手っ取り早く金持ちになりたがっており、アークの向こう見ずたちの力を借りて、グリマーキャップダストを集め始めた。
その産物は事実上ララータの公的特権だったが、この事実は若者に、自分で危険な麻薬取引を始めるために西海岸近くの洞窟 - 目立つ事はないと彼は信じていた - に疑う事を知らない少年たちのグループを送る事を止める事は無かった。

ほぼ一ヶ月の間、この仕事は順調に進んでいた、そして彼の財布は人気のある居酒屋のマグ以上に早く満たされていった。
しかしある朝、キノコが集められていた洞窟に足を踏み入れた時、ひと気の無さに気が付いた。
入口の前に、4つの人くらいの大きさのかごの乗っている手押し車だけがあった。
かごはグリマーキャップキノコでいっぱいになっていたが、異臭を放っていた。
商人は護衛に、その中身を地面に放り出すよう命じると、様々な体の部分がそれぞれのかごから転がり落ちた:
腕、足、胴体、頭と。
頭は注意深く切り落とされていたので、それぞれの持ち主については疑いようが無かった:
頭のうち5つはささやかな収入の為に商人に雇われていた不幸な少年たちのものだった。
頭のうち2つは商人の娘のものだった。
八番目のものは、彼の伴侶のものだった。
彼女の額には、こんな言葉が刻み込まれていた:"Sha’Rim Rhalata" - ララータは忘れない。

彼等は商人を生かしておいた。
ただ彼はもう二度と黄金の鎌ギルド内で見かけられることは無く、噂では数ヵ月後に自殺したという。
こうして、古い行商人の物語は終わった。

そして今、わたしたちはここに居る。
不安を感じた。
わたしたちは全てにおいて"上層地区"と"富"を露骨にしていた - しぐさ、高価な衣服、カリアンの短剣。
扉の奥、階段は暗闇につながっている。
人々の生活の兆候に遭遇するまで15分以上もかかった。
空気は冷たく、湿っていた。
アンモニア、カビ、それに濡れた石のにおいがした。
長く続いた石の階段の終わりに到着した。
木の板が道を表しており、それは約30アームの高さのトンネルに通じていた。
わたしたちが通過した最初の家は、わたしはほとんどそれとわからなかったが、岩の自然な角にしっかりと建てられていた。
壁から伸びて床につながっている大きくてさびついたダクト、家の一部である壊れやすい木の破片の飛び散り。
壊れたものもあるが、洞窟の石に接していない壁に箱や樽が積まれていた。

一方で、だんだんと多くの住人たちがわたしたちのことに気付いていた。
疑惑を持って見てくる者や、すばやく視線をそらす者、ぼんやりと見てくるだけの者もいた。
幾つもの小屋を通り過ぎていくと、前方に屋根のある建築も見えてきて、おそらくは市場の屋台のようなところだった。
魚、香辛料、見た目のよろしくないパンや、他にも諸々が置かれていた。
カリアンは人々の視線を気にしていないようだった。
彼は足早に角の向こうへ姿を消した。
彼に続いたわたしは、息をのむものを目にすることになった。

わたしの前には、広大な洞窟があり、天井はものすごく高く、そこには二つの監視塔もあって、それはお互いに重なり合って上手く溶け込んでいた。
鍾乳石が石のツララさながらに天井から垂れ下がっていた。
遠くにはとても目立つ滝が岩場から注がれていた。
洞窟のいたるところに、濃い色の木の家が高台に作られ、桟橋や自然の石柱に支えられた階段やつり橋でつながっていた。
家は洞窟の壁に向かうほどますます高くなり、さながらその景色は巨大な円形劇場を連想させた。
その中央には、むき出しの石の床に建物が建てられていた。
その様子や外観は、高台の家とは違っていた。
わたしは石の建物を見た時、高い屋根と尖塔があったので、小さな寺院のように思えた。
そこには何十アームの長さもある多層の建物が隣り合っていた。
それもまた石から出来ていて、窓は赤みのある乳白色の輝きを放っていた。
大勢の人がせわしなく動き回っており、地下都市の中心である可能性の高いその開けた空間の辺りをどれだけ見渡したとしても、あまりに暗くてほとんどシルエットを判別する事はできなかった。
アンダーシティ...その名にふさわしかった。

太った男が付近を通りかかって鉢合わせしたので、わたしはふと我に返った。
ため息をついて、冷たい空気にも関わらず、額から噴き出してくる汗をふき取った。
それから、先に行ったカリアンを探した。
わたしは、階段のふもと、葉の無いくねくねした木の下で彼を見つけた。
誰かと話していた。
わたしは急ぎ足に階段を降りた。
わたしが近づくと、その見知らぬ相手はわたしの方を指差して、カリアンは落ち着かせるようなしぐさをした。
近づいてようやく、それが女性である事がわかった。
その髪は短くブロンドで、柔和な表情と真紅の唇は絶妙な対照であった。
ただ彼女の目...わたしは腹の中に何か火照るものを感じた、不服というか、怒りのようなものを。
彼女の目は氷のように冷たい青さで、洞窟の淡い光のなかでさえ輝いているように思えたからぞっとするほどだった。
二人はこうしてみると美しかったが、わたしにはなんだかわからない感じをもたせた。
彼らを見るとぞっとするような気がした。

わたしが、わたしの心の内に鳴る声を考えられるようになる前に、カリアンが話し始めた。

"ヤエル、紹介しようか...?"
彼は手を広げて、手のひらを上に向けその若い女性を指し示した。
"ヤレナだ。"

わたしは返事をしようとしたが上手くいかなかった。

ヤレナはわたしのことをざっと、頭のてっぺんから足の先まで眺めて、視線をはずした。

"彼はまるでお漏らししそうだけど。本当に大丈夫だと? まだ間に合うよ。"

カリアンは魅力的な笑みを浮かべてうなずいた。
"間違いない。それに信じてもいい、大丈夫だ。"

女性は唇をかんで、眉をひそめた。
それから彼女はカリアンにうなずき返した。

"わかった。行こう。"

わたしたちは動き出した。
たぶんわたしの想像に過ぎないが、わたしたちを取り囲む嫌な視線の数が増えた印象があった。
洞窟内の空気や闇が突然重々しく感じられた。
カリアンは肩越しにわたしを見ていた。
彼の目には恐怖や不安の欠片もなかった。
ある意味、期待で輝いてさえいた。
だがなぜだろう?
わたしは、ここには数多くのうさんくさい人たちが居るという事実に気付いていた。
しかしなぜカリアンと、わたしたちのガイドはお互いに馴染んでいるように思えるのだろう?

わたしたちの目的地は、赤い窓を持つ多層の建物のすぐ隣にある真っ暗な路地だった。
入口の標識から、そこは"シルバークラウド"だと判断出来た。
女性はためらいもせずにその暗闇に足を踏み入れ、わたしたちは後に従った。
この建物の影は本当に暗闇で、路地の行き止まりでさらに小さなところへ入っていくガイドを見た。
わたしは、不安がいや増した。
これは迷宮だ、それもひときわ危険なものだ。
人っ子一人居ない、ただゴミの山と排泄物の残りかすだけがあった。
出会いは二度だけだった。
 - 最初は、焚き火にあたっている二人の男を見た。
ヤレナが遠くから火を目にすると、足早に進み、全力で1人の男の頭を蹴りつけた。
彼は息の詰まった悲鳴をあげ、倒れ、もう1人は怯え、壁に向かって立ち上がろうとした。
ヤレナは彼を見逃さなかった。
彼女は乞食をつかんで顔がくっつきそうなほどの距離で、"焚き火"、"路地"、それに"兄弟姉妹"
とか何とか文句を言っていた。
彼女はつかんでいた乞食を床に叩きつけて、わたしたちに先へ進もうと言ってきた。
この暗闇で人との2回目の出会いは、地下の迷路で家の壁にもたれかかってシーツにくるまった相手とだった。
わたしはその覆いのために彼女を認識できなかった。
しかし通り過ぎる際、彼女は骨ばった指でわたしのももをつかんできた。
わたしは悲鳴を上げて振り向いた。
彼女は頭にかぶっていたシーツを取り除き、わたしよりもはるかに年を食った顔をあらわにしたが、化膿してひどいことになっている腫瘍におおわれていた。
肉にはハエがたかっていた。
彼女はたっての願いのように聞こえた何かをささやいたが、口からはがらがらと喉が鳴る音しか出てこなかった。
ぎこちないながらも、彼女の爪から足をはがして、カリアンとヤレナの後ろに急ぎ回った。

永遠のように感じてからようやく到着すると、わたしは丸一日足早にさまよっていたかのようにくたくただった。
わたしは自分の身にこの嫌なにおいが染み付きはしないかと恐れていた。

ヤレナは厚い鉄製の扉の前で立ち止まり、二度ノックをした。
しばらくしてハッチが開き、ふさふさの眉を持つ二つの目がそこからのぞいた。
それがわたしたちの案内者を認識すると、ラッチのきしむ音が聞こえ、扉が開いた。
扉を守っていたのは丸刈りの平凡な男で、その無作法な感じがわたし自身を思い起こさせた。
彼は何も言わずにわたしたちを見たが、そのしぐさは、彼はヤレナの従者だと示していた。
うれしい事に、建物はその外観から想像していたものと違い、清潔で、壁にある幾つもの燭代で照らされていた。
また空気にはほんのかすかなラベンダーの香りが漂っていて、ここ何時間もの間の排泄物のにおいにまみれていた後には、イルランダの髪の香りにさえ思えた。

一言も無いまま、カリアンとわたしは無数の閉ざされた扉のある狭い通路に沿って導かれた。
扉の下からもれ出てくる薄暗い光のためか、それらは閉ざされた監房の扉のようにわたしを圧倒するような気がした。
ヤレナは通路の行き止まりにある扉を開けた。

わたしたちの前に広がる部屋は素晴らしかった。
高級家具や枕で彩られ、天井のシャンデリアが柔らかなオレンジの光を放っていた。
部屋の空気は霧がかかっているようで、クッションに囲まれた低いテーブルの向こうを見た時、ラベンダーの香りがどこから来ていたのかわかった。
それぞれに約20人分の席があったが、わたしたちや扉を守っていたもの、それにヤレナ以外にはたった三人の客だけがテーブルにばらばらに座っており、ワインを飲んだり水ぎせるを吸っていた。
穏やかなハープ演奏が、わたしの視界から隠れている部屋の角から流れてくる。
また居心地の良さを覚え始めた。
もしかしてここは喫煙者のための居酒屋というだけなのだろうか?
おそらくはもっと特別な客のための特別な場所だろう。
ラベンダーの香りのあるピースウィードのパイプを吸うためだけに、なぜ特別な客が路地を通り抜けるような手間をかけるのか、わからない。
唇をすぼめて、力なさげにカリアンを見た。
彼はただ満足そうに微笑み、軽くうなずいてた。

"座って"、ヤレナは言って、角にある空いているテーブルを指差した。
それから彼女はカーテンの後ろへ静かに姿を消すと、戸口担当の警備は入口の方へ戻っていった。

わたしは話したがったが、カリアンは待つように指示してきた。
わたしたちは座った。
何気なく辺りを見渡し、他の客を観察した。
二人は男、一人は若く、もう1人は年寄り、それに髪を団子状にまとめた老女だ。
服装からして、みんな裕福で、わたしたちと同じ感じだった。
誰もわたしたちのことなど気にも留めていない。
カリアンはテーブルからロウソクを一本手にし、水ギセルのポット下側に取り付けた。
そして彼は後ろにもたれかかった - 枕は壁に立てかけられていた - それから機嫌よさげにあくびをした。
陽気でリラックスした視線を水ギセルに向けた。
ポットの中では、泡がゆっくりと姿を見せ始めた。
しばらくの間、彼と同じようにしていた:そうして沈黙を破る事にした。

"カリアン..."

彼はしぐさでわたしの言葉をさえぎり、あたまをほとんど揺さぶるようにした。
"肩の力を抜くといい、友よ。"片手で水ギセルのポットに触れていた。"リラックスさ。"

~

親しげな笑みを浮かべたまるまると太った男がわたしたちに接触してくるまで、30分以上待つこととなった。
彼は自分をコンティスと紹介した。

一番最初に気付いたのは、値の張りそうなワインレッドの服の左袖が垂れ下がっていることだった。
彼は片腕しかなかった。
右手を挨拶代わりに差し出してきたが、太い指には幾つもの指輪が輝いていた。
彼の香水からは、驚くほど心地よい香りがしていた。
スパイシーで、甘い感じだった。

"遅れてすまなかったね"、彼はその外見に似合わない、暗くて低い調子の声で話し始めた。
"今日はやけに客がいてね。空いているかな?"

カリアンはうれしそうにもちろんと答えると、コンティスはわたしたちと反対側に座った。
しばらくは誰も何も言わず、わたしは、コンティスの暗くて鋭い目がわたしを値踏みしているのを感じていた。
それから彼は満足そうにうなずいた。

"さてさて。第一審査だ。"
彼はその服から折りたたまれた羊皮紙を取り出して、広げ、さっと目を通した。

"ジャリモン・バティーラ、46歳、商人。それで...ああ、アラジアルから来たのか?
おや! 君の連れてきたエンデラル人はとても良いということかな!"

この質問はカリアンに投げられたようだった。彼は微笑んだ。

"練習をつめばモノになる、ええ。"

コンティスはうなずいた。
"実際その通りだ。そしてああ...ヤエル・サラス。アラジアル人の連れよ。"

わたしはうなずき、カリアンのように魅力的に微笑もうとしてみた。

"よろしい。"彼は再び羊皮紙を折りたたみ、少し前かがみになった。"では始めよう。よろしいかな?"

カリアンは口の端から上に向かって煙を吹いた。
ピースウィードを吸った者誰もがそうであるように、彼は少しぼんやりとした目つきをしていたが、それでも意識ははっきりとしているようだった。

"ぜひにも"、彼は答えた。

"抜けの無いようにするために、もう一度滞在のルールと手続きの説明しよう、そして願わくば再訪を期待しよう。"
彼の声は親しげだが、そこには確かな鋭さを感じられた。
"残りを支払いいただければすぐに召使は..."

"サービスを受ける前に支払う必要があるのか?"
カリアンは憤慨しているようだった。

"それがルールです、ミスタ。申し訳ありませんが"、コンティスは視線を逸らすことなく答えた。

カリアンは太った男を不機嫌そうに見たが、同意のしぐさをした。

コンティスは微笑んだ。
"そうしましたら、召使があなた方に合図を送りますので、あなた方をお部屋に連れて行きます。"
彼は再び羊皮紙を見た。
"というよりかは、あなたをお部屋に。女の子たちがそこで待っているでしょう。そこから先のことはあなた次第です。"

女の子たち?
背中の芯を震えが走って、カリアンに緊張した視線を向けた。

コンティスはわたしの視線に気が付いた。"よろしいですかな、ミスタ?"、彼が聞いてきた。

わたしよりも先に、カリアンが口を開いた:"彼は少しばかり興奮しているんだ。"
彼はわたしをいさめるように見た。"初めてなんでね。"

コンティスは眉をひそめた。"ああ、そうでしたか。"

"用意が出来ましたらすぐにナイトスタンドのベルを鳴らして、少し待ってからもう一度鳴らしてください、そうしたら誰かが来ます..." - 言葉に悩んだようだった - "その後の相手に。まあそういうことです。"
彼は視線をカリアンとわたしの間でさまよわせた。
"そちらからは何か質問がありますか?"

カリアンが質問した:"来たのと同じ道で帰ることになるのかな?"

"そうです。ヤレナが外まであなた方を案内するでしょう。"

連れは無愛想につぶやいた。
"そうか。それで保障できるのだろうか...匿名性を?"

コンティスは少し笑いをもらした。
"付き添いの者を除いた誰も、あなた方がこの場所を訪れたり後にしたりすることを見ることはないことを保障しましょう。
それと他のお客たちはあなた方の事を話すような興味はないことを確信してよろしいでしょう。
わけは話す必要はないと思いますが。"
カリアンは親指と人差し指であごをすこしさすった。
考えているようだった。
それからうなずいて、コンティスに力強い手を差し出した。

"わかった。契約成立だ。"

コンティスは楽しそうに笑った。
最初にカリアンの手を握り、それからわたしの手も握ってきた。
彼の握手は強くてしっかりとしたものだった。
そうしてカリアンはコートから小さく膨れた小袋を取り出して、テーブルにそれをあけた。

"金貨15枚。お望みなら数えてくれ。"

わたしの目は大きくなった。
金貨15枚だって?!
なんという大金だ!
金貨1枚で千ペニーの価値があった!
千ペニー...
まともな家や、最上品種の軍馬を充分に買えるほどだ。
それより15倍もの価値のあるものが買えるというものを思うと、頭がくらくらした。
しかしカリアンは輝く金を見てもすまし顔を保っていた。
この大金はカリアンの謎めいた"兄弟姉妹"の宝物が出所なのだろうか?
おそらくはそうなのだろう。
わたしは落ち着かずに視線を金貨から逸らして、満足そうにそれを見ていたここの主人を見やった。

"その必要はないでしょう。"
彼が手を振ると、赤い服を着たやせた少年が、2枚のカーテンの間からやってきた。
その頭はうやうやしそうに下げられていた。
わたしたちのテーブルまでやってくると、コンティスはただコインを指差した。
少年はすばやく音もなしにそれを集めて、運び去った。
カーテンの向こうへ姿を消した後、コンティスはまた口を開いた。

"これでよし。楽しんでいくといい!"

カリアンは微笑んで、紫煙をぷかりとさせた。"ありがとう。"

それ以上何も言わずに、コンティスは立ち上がって去っていった。
5分も経たないうちに、カーテンはまた開いて、あのやせた少年が出てきてわたしたちについてくるように言った。

カリアンは少しだけうなずいて、パイプの最後の麻薬を吹かした。
彼がピースウィードでいっぱいだった二つのポットをほとんど吸い尽くしたことに気付いて不安を覚えた;
その量は、うぬぼれ屋の口先ばかりの男が数時間は昏睡してしまうほどのものだった。
しかしカリアンは疲れているようには思えなかった。
彼の目はピースウィードをやるものに特徴的な乳白色のきらめきがあり、動きは静かなものだったが、またその目に奇妙で威圧的な光を目にして、それはあの晩に"罪の味"について語った時のものだと気付いた。

わたしたちは立ち上がって部屋を横切って少年の方へ歩いた。
すぐ前に立った時でさえ、彼は面を上げず、地面に向かって頭を下げたままだった。
彼は振り向き、カーテンの向こうに伸びる長い廊下を進んで、わたしたちはその後を追った。
入口から客間までつながる廊下に似て、8アームごとに両側に重い鉄の扉があった。
それぞれの扉にはアーチの上に数字があり、とんでもなく高価な金のバッジに書かれていた。
部屋番号XVIの前で立ち止まった。
黙ったままその少年は大きな輪から重い鍵を抜き取って、カリアンの手に差し出した。
そうして彼は少し挨拶のしぐさをして、振り向いていなくなった。
カリアンは手先の器用さで鍵で遊び、それから錠前に差し入れた。

扉は音も無く開かれた。

~

その部屋は広くて豪華だった。
シャンデリアが、赤い紙のスクリーンで飾られたロウソクの光を放っていた。
豪華な天蓋付きのベッドが中央に置かれていて、空気中には強いほどバラとラベンダーの香りがした。
わたしは二人の縛られた少女に気付くより先に、カリアンに続いて部屋に入って重い扉がパタンと閉じられただけで背中をつめたい緊張が走った。
そしてカリアンが、この場所が提供するサービスについて教える前に、それぞれが一体となって、はっきりと恐ろしい全体を作り出した。
わたしは辺りを見渡して、おののいた。
わたしの視線はXVI番の部屋の様々な、目的のはっきりした要素の間を次々とさまよった。
ベッドの縛られた少女たちは全裸で、その目は疑うことなく麻薬でぼんやりしていた。
小さなテーブルにある箱にはとげのある種が入っていて、すぐにそれがヒイラギのそれだとわかった。
Old Lower Aranathのパン屋の女将でさえその媚薬効果は知っていた。
そして、壁にかかった道具の数々。

"それがお好きかな?"、カリアンが聞いてきた。
彼は広げられていたワインレッドの敷物に座っていた。
ベッドにいる縛られた少女たちとは手の届きそうな距離で、しかし彼は少しも見ようとしていなかった。
彼の口の端にはもう決して消えそうとは思えない笑みが見られた。
わたしたちは楽しむつもりだった。

化け物だ、わたしは思い、混乱した。
言葉もなしにわたしはカリアンを攻撃した。
大声を上げて飛びかかり、彼に馬乗りになって首を絞め始めた。
カリアンは予期していなかったようで、しばらくは優位にあると思っていた。
しかしすぐに、彼は笑い始めた - そうしようとした。
出てきたのはむせぶようながらがら声だった。
怒りに任せてわたしは力を強める一方で、わたしの表情は憎しみに満ちた嫌なものへ変わっていた。
しかしカリアンはただ笑い続けていた。
彼の目は喜びと楽しみで輝いていた。
もしわたし自身がそこに加わることなく見ていたら、おそらくそれを見た目だけの、ショー的な戦いだと思っただろう。
彼はわたしの手から逃れようという努力すらしなかった。
この惨めなクソ野郎!
忌々しいやつだ!
わたしはいっそう力をこめた。
彼の暖かな肉体を締め付けると、指をちくちくと刺してくるカリアンの無精ひげを感じた。
しかし何も起きなかった。
カリアンはまだ笑っており、1分後には、普通の存在ならもう意識があるはずが無いことに気付いた。
しかしそうなってはいなかった。
まったく何も起きていない。
しばらくしてカリアンの笑いは止まったが、彼を殺したからではなかった。
彼の表情は、赤くさえなっておらず、ふたたび満足そうな平静さを示し始めた。
わたしは突然、無力さとばかばかしさを感じた。
わたしはカリアンの戦いを目にしたことは無いが、出会ったあの日以来、焚き火を囲む雰囲気のように、彼を取り囲む力のオーラを感じていた。
彼は危険だった。
わたしは恐怖を感じた。
彼はわたしを殺せた、脳裏をよぎった。
一度や二度ならず、何度も、重苦しいドラムの連打のように。
彼はわたしを殺せた!

"だがそうする気はない"、カリアンは言った。
彼の唇は少しも動いてなかった。

それから彼は右手をわたしの胸に当て、一秒後にわたしは砲弾が当たったかのように後ろへ吹き飛ばされた。
石の床に激しく打ち付けられ、意識を失った。

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